大気が不安定だとなぜ雨が降るのか?そもそも「不安定」とは?

ペーパー気象予報士のハルです。

よく天気予報でこんなフレーズを聞くような気がしませんか?

「南の海上から湿った空気が前線に流れ込み、大気の状態が不安定になります」

似たようなフレーズとして

「上空に強い寒気が流れ込むため、大気の状態が不安定になります」

というのもあるような気がします。

実は昔からこの「大気の状態が不安定」というのはどういうことなんだろうと気になっていました。気象予報士試験の勉強を通して「不安定ってそういうことか~」と納得できたので、まとめておきたいと思います。


不安定とは?安定とは?

疑問をもう少し詳しく

そもそも「不安定」とはどういう意味の言葉なのでしょう。何となく「雨が降りやすくなっている」という意味ではないかと感じていたのですが、それなら「不安定」などというフレーズを挟まずに直接「湿った空気が前線に流れ込み、雨が降りやすくなります」と言えばいいわけです。そう言わずに「不安定になるから雨が降りやすい」と聞こえるような言い方をすることにずっと違和感を持っていました。

湿った空気が流入
→ 雨が降りやすい

ではなくて

湿った空気が流入
→ 大気が不安定になる
→ 不安定になるから雨が降りやすい

という風に聞こえるんですよね。

なんで「大気が不安定」というのが間にはさまるのだろうかという疑問がずっとありました。湿っぽくなるから雨が降りやすくなるのは当たり前では?とか思っていたわけです(ただ、「上空に寒気が入る」でも雨が降りやすくなるのは理由のイメージができませんでしたが・・・)。

キーワードはやはり「安定・不安定」だった

気象学を勉強してみると、やはりこの「安定・不安定」には意味がありました。詳しく述べると大変なので、ごく簡単に述べてみます。

ちょっと唐突ですが、やじろべえをイメージしてみてください。やじろべえは左右に傾いていない状態で止まることができますよね。これを「つり合いの状態」と呼ぶことにします。

やじろべえを指で押して少し左に傾けて、そこで指を離すとどうなるでしょうか。そのまま倒れてしまうかと思えばそうではなく、つり合いの状態に向かって戻ってきますよね。ちなみにつり合いの状態に戻ってきたときには勢いが付いているので、反対側(右側)に向けて通り過ぎてしまいます。ですがこの場合もまた、つり合いの状態(左)に向けて戻ってきます。

このような状態を物理学では「安定」と表現します(とハルは学生時代に学びました…)。つまりこういうことです。

安定 = つり合いの状態から少しズレても、自発的につり合いの状態に戻ろうとする

逆に「不安定」とは、この逆ですから

不安定 = つり合いの状態から少しでもズレると、どんどんつり合いの状態から離れていく

ということになります。例えばやじろべえの重心を高くしすぎるとこの「不安定」の状態になります。

この「安定・不安定」という言葉のイメージを頭に入れた上で、気象における「大気の安定・不安定」について考えていきます。

安定・不安定と雨

安定な大気とは?

上で述べた「安定」の意味を用いると、「安定な大気」とは、大気がつりあいの状態から少しズレたときに元通りに戻ろうとする状態のことです。

気象について考える場合の「ズレ」とは、「空気が温められて少し上昇する」ことを意味します。こんな感じです。

  1. 太陽光で地面が温められる
  2. 続いて地表近くの空気が温められる
  3. 空気は温められると少し膨張して密度が低くなる
  4. 密度が低くなると浮かぶ

この1つ1つのプロセスを詳しく述べるとすごい量になってしまいますので、何となく「温められると軽くなって浮かぶよね」ぐらいに思っていただくといいと思います。実は大気の密度は温度に反比例する(圧力が決まっている場合)という法則があるので、温度が上がれば密度が下がるのですが・・・。

そして、浮かんだ空気が元の位置に戻る、つまり「ちょっと浮かんだけどまた下降する」となれば「安定な大気」ということになります。それはどのような状況かというと、浮かんだ空気の方が周囲の大気よりも低温(=高密度)であるような状況です。

空気は浮かびながら断熱膨張しますので少し温度が下がりますが(説明は省略…)、周囲の大気も高い所では温度が下がるのが普通なので、その競争ということになりますね。安定な大気の場合は、浮かんだ空気の方が低温になる必要があるので、言い換えると周囲の大気は上空に行ってもあまり温度が下がらないことが必要です。

不安定な大気とは?

不安定な大気とはこの逆です。温められて空気が少し上昇すると、周囲の大気よりも自分の方が高温(=低密度)になってしまって、さらに上昇してしまう。その先でも周囲の大気より自分の方が高温だから、もっと上昇してしまう・・・というような状態のことです。

こうなるためには、以下のどちらかの条件が必要です。

  1. 温められた空気が上昇する際に、あまり温度が下がらない
  2. 大気が上空に行くほどすごく低温になる

1番目の条件が満たされるのは、地表近くの空気が湿っているときです。湿度の高い空気は、浮かびながら断熱膨張をする際にあまり温度が下がりません。少し浮かんで少し温度が下がった際に湿度が100%に達してしまうと、以後は水蒸気が水滴になってしまって、その際に「凝結熱」という熱を放出して温まってしまうからです。この辺も詳しく書くと長くなりますね。

2番目の条件が満たされるのは、もうそのままズバリ「上空の大気が寒いとき」です。

以上のようなわけで、地表近くに湿った空気が存在しているときや上空が寒いときには、大気の状態が不安定となります。

不安定だとなぜ雨が降るのか?

大気が不安定な状態になりますと、ちょっと温められて上昇を始めた空気がドンドン上昇を続けてしまいます。空気は上昇すればするほど断熱膨張で冷えていくので、どこかで湿度が100%になって水蒸気が水滴になってしまいます。

空気中に水滴がたくさん出てくると、それはつまり「雲ができた」ということになるわけです。たくさんの空気がドンドン上昇を続けて水滴がたくさんできると、大きな雲ができますのでいずれは大雨が降る・・・というわけです。

まとめ!

天気予報でよく耳にする「大気の状態が不安定になり、雨が降りやすくなります」というフレーズに対して「不安定とは何のこと?」「不安定になるとなぜ雨が降りやすくなるの?」という疑問を感じたことを思い出して、知識をまとめてみました。

不安定とは「少し浮かんだ空気が元に戻れずにドンドン上昇を続けてしまう」という状態のこと。

そうなるためには、下の方の空気が湿っているか、上空の空気が寒いか、どちらかの条件が必要である(もちろん組み合わせでもよい)。

大気が不安定だと、空気がドンドン上昇していき、断熱膨張で温度が下がり、水蒸気が水滴になる=つまり雲ができるので、雨が降りやすくなる。

ということでした。「南の海上から湿った空気が前線に流れ込み、大気の状態が不安定になるでしょう。大雨に注意しましょう」とか「上空に非常に強い寒気が入り込んでいますので、(以下同文)」というフレーズにはこれだけの背景知識が詰まっているんだなあと再確認しました。

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